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picture たまに読書

HN harborが撮った写真や絵をアップしていきたいと思います。たまに読書とか、たわいもない話から、真面目な話など。お笑いなんかも・・・

へんしん

 へんしん

 
  ある少年と、金魚ちゃんのお話です。
 体の色が真っ赤と真っ白の大ぶりの金魚は、夏祭りの金魚すくいの中ででも、すごく目立っていました。     
 この金魚が、どのような経緯で東京は江戸川区の養殖所に引き取られたかは定かではありません。ですが、そこで養育され、とっくに縁日デビューをしていました。
 多くの子ども達が、この金魚を血まなこになって狙うのですが、皆、ゲットできませんでした。中には最初からこの金魚を狙うのを諦めてしまう気の弱い子もいました。
 それを、金魚すくいの名人の、かんた君がゲットしたのです。金魚ちゃんは、とうとう人間様と接点が出来たので嬉しくて仕方がありませんでした。
 多くの人間に知られていませんが金魚の世界にも学校があるのです。金魚ちゃんは人間世界のことを、そこで学びました。文明・文化・習慣・歴史・言語・政治・経済・法律・文学・芸術・・・
 金魚が、人間の世界を学んできた中で、一番うれしかったことは、『人間は金魚を愛し、食べたりしない』という風習でした。
 金魚はとっくに金魚の学校を修了したのに、自分は人間に飼育されず、金魚屋さんのおじさんの元で、未だにお世話になっている自分は情けないやら、悔しいやらで、日に日に焦りは募るばかりでした。人間に飼われる日が来ることを待ちわびるばかりでした。今日の縁日でも・・・また・・・
 そこを,かんた君がゲットしてくれたのです。
 かんた君は金魚を家にもって帰り、金魚ばちに入れてみました。真っ赤で大きくて・・・お父さんや、お母さんも惚れ惚れするような気持で、金魚ばちをのぞき込んで観ていました。「これは、新しく大きな水槽を買ってこなければならないな。」お父さんはそう言いました。「かんた!よく、すくってきたな!この金魚も今日からは家族の一員だ。」それを聞いた、かんた君も金魚も嬉しくて仕方がありませんでした。
かんた君は金魚を『金ちゃん』と名付けました。かんた君や、お父さん、お母さんに大事に飼育されていたので、かんた君の家に来た日から、三年で体の大きさが三倍くらいになっていました。お父さんが買ってくれた水槽でも自由に泳ぐには難しくなりました。昔から、向上心が金魚一倍強かった金ちゃんは、水槽を出て、もっと広い世界を観てみたいと思うようになりました。修行というものに憧れていました。ある日、そのことをかんた君に打ち明けました。「そうかー、金ちゃんはお祭りの日に初めて見た時から、他の金魚達とは違っていたもんな!こんな日が来ることは薄々感じていたよー !」と言いました。「修行がしたいけど、どこがいいだろうか?」と質問しました。「やはり、お寺だよ」そうかんた君は答えました。金ちゃんの気持ちはかたまりました。かんた君一家に別れを告げ、お寺に木魚として修行することになりました。和尚様に、「金ちゃん!どんなに辛くても三年、三年はじっと我慢しなさい。石の上にも三年というじゃろ!」「ハイ、和尚様!どんなに辛くとも三年は頑張ります!」と言い切りました。
 木魚として修業を始めた金ちゃんは、毎日毎日、和尚様の読経の時にポクポク叩かれていました。「痛いじゃろうが、我慢しなされ!修行が終わった後、今まで見えなかった世界が見えてくるからな。」と言われました。三日坊主という言葉がありますが金ちゃんは木魚の修行を3分で止めたくなりました。でも、かんたくんの家を出たからにはもう後には戻れません。『三年』は、このお寺さんでの修行を成し遂げられるよう頑張るしかないのです。ポク ポク ポク、今日も叩かれます。
 でも一年が過ぎると、痛みはあまり感じなくなりました。叩かれることによってウロコが固く強くなり、いまではヨロイ・カブトのように全身がイカツク変りました。ポク ポク ポク 慣れてきたのか、和尚様の唱えるお経を暗唱出来るまでになりました。見どころがあると思った和尚様は読経以外の時は、お寺の他の僧侶さんと一緒に写経にも取り組ませました。もともと、頭脳明晰の金ちゃんです。多くのお経を暗記してしまいました。
 三年が過ぎました。

 お寺を後にすることになりました。
 
 次に新潟県に行くことにしました。金ちゃんは、自分は金魚だと思い込んでいましたが、実は錦ゴイだったことがわかったのです。それで錦ゴイの養殖の盛ん新潟県に行くことにしたのです。品川の港で、気の良いトラックの運転手さんに乗せてもらい、新潟港につきました。そして養殖所を訪ねました。養殖所のおっちゃんは、一目見るなり「おまえさん!錦ゴイで終わるのはもったいないよ!竜を目指しなよ!」と言いました。金ちゃんは知っていました。中国に黄河という大きな川があって、竜門という急流があり、その急流を登り切ったコイは竜に成れるという言い伝えがあることを。『登竜門』という言葉はそこから来ていると学校で教わったからでした。でも、中国にどうやって行くか???新潟港の海辺にたたずみ、考えていました。飛行機に乗れば三時間くらいで行けることは知っていました。でも、お金がありません。船もしかりです。
 「おい、魚、お前は、さっきから何を思ってボケっとしているんだ。」と一羽のカモメが話しかけてきました。「なになに、そうか!ふーむ
人間世界では、何をするにもお金が必要だからな・・・だがお前は魚だろ、自力で泳いで中国大陸に渡ればいいじゃないか。」
 そうか、馬鹿だな俺は、俺は魚だったんだ。と気づきました。長い間、人間の世界で暮らしていたので、うっかり忘れていたのです。泳いで中国大陸に渡る!!!未知の距離です。「良いことを教えてやるよ!この新潟港を泳いでいくと。オッホン 俺様はこの翼で飛んでいくのだけどな!
大きな島があるんだ。人間どもはその島を佐渡と呼んでいるけどな・・・まずは三年、この新潟港を端から端まで泳いで、基礎体力・スタミナをつけ、そして佐渡まで距離を伸ばし、新潟港と佐渡の間を毎日毎日往復し、それを十年間、毎日欠かさず続ければ余裕で中国大陸まで渡れるよ。でも、この日本から中国を目指す魚がいるとはね!頑張れよ!達者でな・・・。」そう言い残し、飛び去って行きました。親切なカモメだなーと思いました。そうか、為せば成るだな!地道に努力を続ければ・・・諦めない。金魚の学校にいた時、こんなことを金ちゃんに向けて言った友達のことを思い出しました。その名言はこうです。栄光は一握りの金魚だけがつかむのではなく、一握りの金魚しか栄光をつかむ努力にえられない。
 努力こそ全て。

 十年が過ぎていました。金ちゃんは新潟と佐渡を一日に一往復どころか十往復もしていました。明日、中国を目指し出発だ。ブルっと震えました。武者震いでした。
 さー、中国を目指し出発。グングンということばのように本当に、グングン泳げます。佐渡で三日間は、お休みして中国に・・・
 金ちゃんは、さほどの疲れもなく、中国の黄河にたどり着きました。ここからが本番なのです。あえて、疲れてもいないのに佐渡で休んだのはそのためでした。急いては事をし損ずる.焦ったら負け、短気をおこした方の負け、明日一日で勝負をつける。この日のために、この日のためだけに、修練・研鑽を積んできたのだから、絶対、勝つ。勝つ以外にない。
 皆さんは、この後に金ちゃんはどうなったか?おわかりますか?そうです。金ちゃんは見事、黄河の竜門の急流を登り切りました。
 すると目の前に閃光が現れ、声が聞こえてきました。姿かたちはありませんでした。前方からも、後方からも上下全四方から声が聴こえてくるのです。「その方!よく急流を登りきったな!お望み通り、竜にしてやる。いいな、とても威厳のある声でした。でも、目的を達した後、あれほど竜になることを目指して、死にもの狂いに努力してきたのに、ふと、かんた君や、水槽を買ってくれたお父さん、毎日毎日、エサを三度三度欠かさず与えてくれたたお母さん・・・かんた君一家を思い出すと涙がポロポロと、流れ落ちていきました。今までに経験したことのない想いがこみあげてきました。違う違う、竜なんかじゃない、かんた君の家に戻りたい。竜門をくぐったんだ錦を飾ったんだ。帰りたい・・・
 神様は、何もおっしゃいませんでした。ですが、神様は全知全能のお方でありますから、金ちゃんの意をくんでくださりました。「よし、お前を鯉のぼりにしてやる。それで、かんた君という少年の住む街に天の配剤で届けてやるから、それでいいな!時間も戻してやる。」「もったいないお言葉、神様ありがとうございます」と、何回も何回もお礼を言いました。
 「明日の縁日で金魚すくいさせてくれるよね。」お父さん!かんた君は、元気に言いました。「あー、いいとも。お前は金魚すくいの名人だからな・・・
 その日の小学校の授業などは、ほとんど身が入らずに、帰宅しました。えっー、お父さんも、お母さんも急なお出かけ・・・すまん、かんた どうしても事情があるんだ。いい子にしていてくれ。子どもが一人でお祭に行くことは禁止されていたため、かんたくんは、我慢することにしました。かんたくんが眠った後、お父さんとお母さんが帰ってきました。「よく、わがままを言わず我慢したな。二人は、かんた君の寝顔をまじまじとみました。かんた君は、金ちゃーんとうわ言を言いました。お父さんとお母さんは、金ちゃん?って何?と思いましたが、わかりません。お母さんが「金魚すくいの夢でも見ているんじゃないかしら?」と言いました。よっぽど金魚すくいがしたかったんでしょうね。」と、お母さんは言いましたが、二人はわがままを言わず、我慢した我が子を誇らしく思いました。
 そして、鯉のぼりを扱う有名な問屋さんに行き、かんた君に鯉のぼりを買いました。    
 サプライズで、かんた君の枕元にそれを置きました。
 翌朝、かんた君は、目が覚め、枕元にある立派な鯉のぼりを見ると、何故か懐かしい気がしました。
 
 来年の五月、この鯉のぼりが、かんた君の家の庭に、風に揺られながら、堂々と、そしてグングンと泳ぐでしょう!!!
以上、ある少年と金魚ちゃんのお話でした。
                          (終わり)

           

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 昨日、童話のコンテストの審査結果の書いてある封書を開封しました。結果は選外でした。
 まー、その様な結果になると・・・そんな予感がしていたので落ちこみませんでしたが・・・
 童話。研究せねば。努力せねばならない領域です。オスカ―ワイルド作の童話なんかも
また、読んでみたいと思います。次いこう次いこう。

 
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  1. 2019/03/26(火) 11:43:01|
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ネコの集会

 三が日も過ぎ、心の余裕も出てきました。年末、部屋の掃除、ひたすら掃除・・・ストレスもたまっていました。ようやく、平穏を取り戻せたようです。今日は、以前掲載しておりましたが、去年のコンテスの際、主催者側から、HP、ブログにアップされた作品でも受け付けますが結果が出るまでは削除してくださいとのことなので、削除しました。コンテストの結果は落選。箸にも棒にもひっかからない・・・ちょっと、絵本と童話って、本腰入れないと駄目だとやっと気づきました。世界が違う。ネコの言葉が不思議に分かった。そんな、説明いらんのですね。固定観念を打ち破って・・・まだまだ諦めませんよ。  ということなので、どういうことかわからないなどと、深夜のアイドルのDJみたいですがアップしたのを見ていただきたいです。

猫の集会

小学三年生のトモ君には、家での仕事が二つあります。一つは郵便受けを確認し、手紙や
葉書があったら、家の人に渡すのが一つと、トモ君の家で飼っている猫のチャーのお世話をすることの二つです。毎日、トモ君は学校から帰ると、郵便受けを確認するのですが、いつもパパやママの手紙や葉書ばかりでした。トモ君は生まれてから一度も、自分宛の手紙や葉書を受け取ったことがないのを寂しく思っていました。
 そんなある日、トモ君に生まれて初めて自分宛の葉書が届きました。トモ君は嬉しくてしょうがなく、家の中に入る前に庭の門の所で葉書を読みました。葉書にはこのようなことが書かれてありました。今度の土曜日、猫の集会があるから、ぜひ、トモ君には参加していただきたい。という内容でした。差出人には猫の長老とだけしか書いてありませんでした。どこからきたのかわかりませんがチャーがそばにいました。そしてチャーはこう言いました。「トモ君には猫の集会にお越しいただきたいという猫の長老からの招待状です。」と。トモ君は不思議なことに猫の言っている言葉が解りました。猫の集会かー?いったいどんな猫たちがあつまってくるのだろうか?何を着ていくべきだろうか?もう一度、細かく、招待状を読むと『深夜0時に集合されたし。』とありました。トモ君は不安になりました。パパやママは深夜0時なんて時間に子供が一人で外に出歩くなんて、絶対に駄目というに決まっています。
 それでトモ君は、黙って、こっそり外出しようと思いました。トモ君は「チャー、いったいどこで猫の集会はおこなわれるのだろうか?」と質問すると「当日、私がご案内します。私の後をついてきて下さい。」とだけチャーは言いました。
 猫の集会があるという土曜日の深夜0時の30分前、トモ君は眠たくなるのを我慢して、何回も水で顔を洗らっていました。チャーがトモ君の足元にまとわりつき、「サァー行きましょう。」と言いました。
 そして一階に降り、玄関の戸をそっーと開け、門も開けました。家のあたりは暗かったのですが一歩、大きな歩道に踏み入れると、街灯が煌々としていたので、歩くのになんの不自由も感じませんでした。チャーの後をついていくと、そこは近所の公園でした。日曜日の昼間にパパとキャッチボールをしたり、バトミントンをするいつもの近所の公園でした。でも、深夜に見る公演はまるで外国に入るようでした。チャーの後についていくと、受付嬢ならぬ受付猫がいました。招待状を受け付猫に出すと、受付け猫が「あなたがトモ君ですか!」と大きな声で言いました。「あなたのお噂はこの猫界隈でもすごく良い評判です。あなたは飼い主の鏡だ。」と受け付けが言うのでした。「さー、どうぞ、トモ君は最前列にお座りくださいと。」と言われ、トモ君は最前列に腰をおろしました。
 だんだん猫たちが増えて、30匹とも50匹とも思われる猫たちが公園に集まっていました。
 そして公園の時計台の針が深夜0時を指しました。0時きっかりに、体がチャーの二倍ほども大きく威厳のある立派そうなトモ君や猫たちの前に立ちました。トモ君は人目見て猫の長老だと思いました。長老の演説です。
 「我等、猫諸君!今日はお忙しい中、時間を割いて、集まってくれてどうもありがとう。」と言うとコホンと咳払いをしました。「今日の我々、飼い猫の立場は非常に悪くなっている。イヤ、悪くなっている一方だ。だが、人間でも今日私が招待した、トモ君は別だが・・・
 よって今日は、トモ君を、この市の名誉市民賞をトモ君に授与したいと思うが異議ある者はいるか?」と長老が言うと、集まっていた猫たちは皆「異議なし!」と唱えました。
 長老が、トモ君、私の前に来るようにというので、トモ君はうやうやしく長老の前に進みました。そして長老から、大きな煮干を三つもらいました。トモ君は失礼のないように右のポッケに煮干しを入れました。
 やがて、授賞式が終ると、集まった猫たちの飲めや唄えやの大宴会がはじまりました。でも、トモ君はころあいをみはらかって、チャーと共に家に帰りました。門の鍵をそおっーと開け、パパやママに気付かれられないように、二階の子供部屋にもどり、ベットに横になるとすぐに寝てしまいました。
 日曜日の朝、トモ君は、昨日の深夜の出来事は、夢だったんだろろうかと思い、右のズボンのポケットを探すと煮干がみつかりませんでした。
 トモ君は「あれは夢だったんだろうか?」とチャーに向かって言いました。
 でもチャーは、眩しそうにトモ君を見て、ただ目を細めているだけでした。
  1. 2018/01/05(金) 20:35:07|
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ダイエットをした雪だるま

              ダイエットをした雪だるま

 その日、小学四年生のトモ君は朝からとてもワクワクしていました。 昨日の深夜から降り始めた雪は、トモ君の通う小学校の校庭も『白銀の世界に変えてしまったはずだ』と思ったからです。トモ君はかけ足で学校に行きました。
 トモ君はその日の四時間目の算数の授業などは上の空でした。クラスのみんなも授業中なのに、しきりに教室の窓から雪の積もった校庭を見ていました。  『お昼休みになったら雪合戦をしよう!』『雪だるまをいっぱいつくろう!』 クラスの男の子も女の子も、そのような気持でいっぱいだったと思います。みんなはいつもより速く給食を食べ終え、雪のいっぱい積もった校庭をめがけて一目散に「サッー」と走り出しました。トモ君もみんなに負けないように校庭に出ました。
クラスのみんなは雪合戦に夢中になっていました。  でもトモ君は雪合戦には参加しませんでした。トモ君は、トモ君のお母さんがいつも作ってくれる『おむすび」くらいの雪の玉を一人でゴロゴロ転がしいました。   雪の玉はトモ君が転がしていくたびに大きくなり、トモ君の背丈と同じくらいの雪だるまが出来ました。雪合戦をしていたクラスメートがトモ君のまわりに集まり、トモ君のつくった雪だるまを見てすごく驚きました。
 その日は放課後になっても,雪は降り続けていました。
放課後、トモ君は雪だるまにバイバイを言って帰りました。次の日も、次の日も・・何故、トモ君がそんなに雪だるまに挨拶をしていたのかというと、トモ君は雪だるまの声を感じて雪だるまと会話をすることが出来たのです。  初めの頃はトモ君も戸惑っていましたが、慣れてくると雪だるまと色々なお話をしました。 ある日、雪だるまは「自分には名前がなくて悲しい。」とトモ君に言いました。 トモ君は「それじゃー、雪だるまだから『ユキちゃん』っていうのはどうだろう?」と提案しました。『ユキちゃんかー!』雪だるまはその名前がすごく気に入りました。 そしてトモ君は雪だるまのユキちゃんに「校庭にずっといて寒いだろうから、僕のお姉さんに許しをもらって、明日、僕のお姉さんの赤いマフラーをもってきてあげるよー」と言いました。
 雪だるまのユキちゃんは冬に生まれて、自分は雪だるまなのだからマフラーを欲しいとは思わなかったのですが、黙っていました。トモ君は、お姉さんに許しをもらい、次の日、約束通りに、赤いマフラーをもってきてくれました。 そしてトモ君はユキちゃんの首に赤いマフラーをかけてあげました。  ユキちゃんはトモ君の顔が近づいたので、マフラーの色と同じように赤くなりました。ユキちゃんは、マフラーをかけてもらうと首のところがあたたかくなり、そして少し、かゆかったのですが、そのこともトモ君に黙っていました。 トモ君が帰った後、ユキちゃんは校庭にいる自分達の仲間を見て、少し誇らしい気持ちになりました。 それから晴れの日が、何日も続きました。校庭の雪のほとんどが溶けて、なくなっていました。  そうすると、トモ君はクラスの男の子達とクラス対抗戦の野球の試合に夢中になりだしました。 ユキちゃんは野球の試合のためにあるバックネットの隅にいて、サードを守っているトモ君を見ているだけの自分は、ものすごく淋しいと思いました。トモ君は昔みたいに,お話をあまりしてくれなくなりました。
 そんなある日の放課後、雪だるまのユキちゃんは、自分から聞こうとしたわけではなかったのですが二人の大人っぽい六年生の女の子達の立ち話を偶然に聞いてしまいました。「やっぱり男の子達ってスリムで髪の毛が長くてキレイな女の子が好きみたいだよね」と一人が話し始めました。「そうそう、それで私も今ダイエットをしているんだもん。」と もう一人が言いました。二人とも髪の毛が腰まであり、お人形さんのようなキレイな女の子達でした。  ユキちゃんは、凄くおませな六年生の女の子達のおしゃべりを聞いていてとても驚きました。  
エッー!!!女の子ってやせていてキレイでなければ男の子達に愛されないの???  最近、トモ君が自分をかまってくれなくなったのは、私の体型が『だるま』で、太っているからなのだと強く思い込んでしまったのです。 トモ君はユキちゃんを陽のあたらないバックネットの隅につくりましたが、ユキちゃんは、みんなが寝静まった深夜に陽のあたる一塁側の方向に自分から動いてしまいました。 悲しいかな、ユキちゃんは自分の命よりも、やせてキレイな女の子に変身したいという気持のほうが強くなってしまったのです。次の日、ユキちゃんは太陽にあたっていると確実に自分でもやせていくことが手に手を取るようにわかりました。 でもユキちゃんが喜んでいるのも、つかの間、自分の意識が朦朧(もうろう)としてきました。
トモ君がもってきてくれた赤いマフラーは、汗とドロとで茶色く変色していたのです。 ユキちゃんは(アッ!どうしよう)と思いました。トモ君から貸してもらったマフラーをこんなに汚しちゃって・・・。 きっとトモ君はお姉さんにしかられるだろうと思うと、なくなりかけた意識の中で申し訳がないと思いました。 ユキちゃんが意識をうしないかけた時、トモ君がかけつけました。ユキちゃんはトモ君を見て「貸してくれたマフラーを汚しちゃって本当にごめんなさい。」と言い残し、静かに息をひきとりました。  トモ君は校庭に立ちつくし、うんと泣きました。トモ君はありのままのユキちゃんが好きだったのですから・・・。 トモ君はドロだらけになったマフラーを胸にかかえてトボトボと歩いて家に帰りました。 トモ君が帰宅すると、大学生のお姉さんも帰宅していました。 トモ君は、お姉さんにユキちゃんとの悲しいお別れの話を聴いてもらいました。 トモ君が全部を喋り終えると、トモ君のお姉さんはこんなお話をしてくれました。「命は今の世界だけのものではなく、それぞれの現世での行いで死んでしまったように思える命も再び生まれ変わり、またその命も死を迎え、さらにそれぞれの行いで新しい命として生まれ変わる。」「トモ君は、ユキちゃんの『死』を嘆き悲しむだけではなく、今度、生まれ変わった、ユキちゃんに出会った時に恥ずかしくない男の子になっていなさいね!」と諭されました。トモ君のお姉さんのお話しは、このようなものでしたが、小学四年生のトモ君にはいまひとつピンときませんでした。トモ君のお姉さんは「体が温まるから。」と言ってトモ君にホット・ミルクを作ってくれました。     その年はもう雪は降りませんでした。

 それから二年後の三学期の雪の降ったある日、六年四組のトモ君のクラスに転校生の女の子が来ました。トモ君は小学六年生になっていて、クラスの委員長にもなっていました。トモ君は、ユキちゃんの生まれ変わりに、いつ、どこで出会っても恥ずかしくない男の子に、なろうと四年生の三学期から一生懸命に勉強をしたのです。それだけでなく、スポーツもがんばりました。 トモ君は六年生の春から少年野球の主将も務め上げました。 転校生の女の子はトモ君の隣の席に座ることになりました。転校生の女の子の名前は佐々木雪さんといいました。  お昼休みの時間に、委員長のトモ君は、佐々木さんのために校内の色々な教室や施設を歩きながら案内してあげました。 トモ君が佐々木さんに「他にどこか観たい教室があるか?」と尋ねると、佐々木さんは、「校庭のバックネットの所に行きたいと言うのです。」 雪もかなり積もっています。でも二人はそこに行ってみました。 佐々木さんはトモ君に「優しくしてくれたお礼に!」と言って、自分のしていた赤いマフラーをトモ君にかけました。 トモ君は、雪の妖精のような佐々木 雪さんの白い整った顔が、自分に近づいたので、ワクワクするようで、それでいて気恥ずかしいという、今までに感じたことが無い不思議な気持ちになりました。 そしてトモ君は、佐々木さんこそが、あの日のユキちゃんの生まれ変わりに違いないと思い、そのことを声に出してみたかったのですが、どうしても声になりませんでした。
 
 全ての音をさえぎるかのように、音のない静かな校庭に、雪だけがシンシンと降っていたからです。             
                                       終わり
  1. 2013/12/28(土) 23:46:18|
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